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       Eietsu Tamura

      ENIACと同年齢の水瓶座。日本IBMに入社以来、原子力、自動車のCAE、21世紀になってライフサイエンスとHPCの主な活用分野に関係してきた。ただIBM SP1までは直接マシンに触ってきたものの、ここのところはThinkPadとiMac/iPhoneに触るのが関の山、もっぱら応援団に回っている。
      出身が核物理の実験屋なので雀100まで—気持ちはScientistのつもり。2008年末に日本IBMを卒業。
      シャロー・コンピューティング LLP, 代表パートナー、他 (現在)
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● SC12のGordon Bell賞 Finalistと国内入選論文

今年も8月の声を聞くと11月にユタ州ソルトレークシティで開催されるSC12がそろそろ気になってきます。ホテルは会場近くに予約できたので、あとは今年も予定されている中国関係のセッションなどをサポートするため、とりあえず連絡待ちといったところです。

去年開催のSC11では、日本の「京」スーパーコンピューターが三冠を取り名実ともに主役を演じたのが記憶に生々しいですが、SC12のプログラムを見ると今年はこの6月にTOP500 Listで一位に登ったIBM Blue Gene/Qが「京」に変わって主役になりつつあるようです。

まず、Gordon Bell賞のFinalist(最終選考入選者)は5件 (米国4, 日本1)ですが、そのうちIBM Blue Gene/Qによるのが下記の2.と4. の2件 (ひとの心臓を10心拍までシミュレーションし11PFlopsの性能に達したという論文と、10PFlops (SC12の時点での到達予想値)の宇宙のシミュレーションの論文)です。
日本の1件は「京」を使った天体物理シミュレーションで4.45PFlopsの性能を得たという論文です。

● Gordon Bell賞のFinalist(最終選考入選者)は

1. “Billion-Particle SIMD-Friendly Two-Point Correlation on Large-Scale HPC Cluster Systems”
著者は IntelとLawrence Berkeley National Laboratoryの研究者

2. “Toward Real-Time Modeling of Human Heart Ventricles at Cellular Resolution: Simulation of Drug-Induced Arrhythmias”
著者は Lawrence Livermore National LaboratoryとIBMの研究者

3. “Extreme-Scale Uncertainty Quantification for Bayesian Inverse Problems Governed by PDEs”
著者はUniversity of Texas at Austinの研究者

4. “The Universe at Extreme Scale – Multi-Petaflop Sky Simulation on the BG/Q”
著者は Argonne National Laboratory、Los Alamos National Laboratory、Lawrence Berkeley National Laboratoryの研究者

5. “4.45 Pflops Astrophysical N-Body Simulation on K Computer – The Gravitational Trillion-Body Problem”
著者は筑波大と東工大の研究者。

の5編となっています。Gordon Bell賞は論文の内容や質なども問われるので、性能値が最大の論文が受賞となるとは限りませんが、Blue Gene/Qを使った2.の論文が魅力的な印象です。

次に技術論文 (Paper)に目を向けると、日本国内からの入選は5編です。入選論文数は全部で100編くらいですから、まだまだ多いとは言えませんが以前に比べて増えているのはよい傾向です。ここらへんで「京」効果というのも起こってほしいものです。

一方で、TOP500 LISTの一位になるなど3-4年前から勢いを増してきた中国からの入選論文が、今年は見たところ1編しかないのが目立ちます。

● 国内からの入選論文は、

1. “Design and Modeling of a Non-Blocking Checkpointing System”
著者は、東工大、Lawrence Livermore National Laboratory、理研の研究者

2. “Peta-Scale Lattice Quantum Chromodynamics on a Blue Gene/Q Supercomputer”
著者はIBM東京基礎研究所の土井さん。2年ぶりの入選とか。

3. “Multi-GPU 3-D FFT for TSUBAME 2.0 Supercomputer”
著者は東工大の研究者。

4. “High-Performance General Solver for Extremely Large-Scale Semidefinite Programing Problems”
著者は、中央大、東工大、理研の研究者

5. GRAPE-8 – An Accelerator for Gravitational N-Body Simulation with 20.5Gflops Performance
著者は東工大と一橋大の研究者

これ以外にも、
“Looking Under the Hood of the IBM Blue Gene/Q Network”の入選論文に、IBMの研究者といっしょにIBMの菅原さんも著者のひとりとなっています。

● ちなみに中国からの入選論文は、見たところでは

1. “RAMZzz: Rank-Aware DRAM Power Management with Dynamic Migrations and Demotions”
著者は、南洋理工大(シンガポール)、香港浸會大學、上海交通大学の研究者。

 

 

 

この数字を見ると、いろいろな考えが湧いてきますが、それはさておき、ソルトレークではSC12が終わったあとたまには一日滞在して、軽いHorse trekkingにトライできないか、策を練っているところです。気候とか交通の便とか難点もいろいろあるので、さてどうなるか。