投稿日: 2010/01/31 | 投稿者: Eietsu
PCでπ計算の新記録を達成したフランスのFabrice Bellardさんですが、本人のウェブサイト http://bellard.org/やそこのπ計算の論文を読むと、ただ者ではなさそうです。
1995年、パリのエコールポリテクニクの学生の時に大学を代表してロボット関係のコンテストに参加したことから始まって、通信、信号処理、Linux、数値アルゴリズム、コンパイラー等々多彩な仕事をしています。本職はパリに住むデジタルTVのソフトウェア・エンジニア。
πの計算については1996-1997に世界記録 (world record for the computation of the individual binary digits of PI)を作っています。
今回の記録について、本人は桁数の記録には特に興味がなくπ計算のためのarbitrary-precision arithmeticのアルゴリズムや、最適化という難しいプログラミングへ挑戦したことに意味があるとしていますから、いわばスーパープログラマーの一人なのかも知れません。
π計算の膨大な桁数のためのarbitrary-precision arithmeticには実用性がほとんどないものの、その計算をする上で必要になる
- DFTのアルゴリズム、
- 大容量ディスクの信頼性管理、
- ハードウェア・エラーが与える計算間違いのテスト
は他に応用が利くだろうと言っています。
このあたりは昨年夏にπの計算桁数の記録を作った筑波大の高橋大介先生の、T2Kの筑波システムの導入時信頼性テストのためにπの計算を行ったという話と共通したものを感じます。
Bellardさんの使用したピーク性能 46.9 GflopsのPC (Core i7 Quad Core(2.93 GHz))が、約2000倍のピーク性能(94.2 TFlops)の能力を備えたT2K筑波システムに対して約96倍までその差を縮められた理由については、
- π計算のアルゴリズムがI/OバウンドなためにT2Kでは演算性能の一部しか発揮できなかったのだろう、
- Core i7のCPUキャッシュの効率的な使い方や数学上のトリックを駆使して高速化を図った
と報告しています。
それにしても世界は広い。
Bellardさんの成果は最新の4コアCPUによる究極の性能の例と言えるでしょうから、逆にいえば汎用スーパーコンピューター T2K筑波システムが上のような悪条件下でもそれに対して1/100以下の処理時間で成果を得られたという証明にもなります。
( BellardさんのPCが1日24時間116日間ノートラブルで連続稼働していたとして)。
製品設計や気象予測などの実用的アプリケーションへの利用を想像すれば、この100倍の違いが画期的な競争力の差につながることは容易にわかります。アメリカやヨーロッパ、はては中国までが争って巨大スーパーコンピューター開発に頑張るわけです。
このところHPC関係の記事がメディアで取り上げられ世間の関心を高めているのは認知度向上という点では心強い面があります。しかし専門家から見ると上っ面だけの内容に見えてしまうのはどうしても避けられないでしょうね。
研究者・開発者の顔が逆なで(?)される機会もそれだけ増えます。
かのR.スローマ先生曰く、成長への努力をリードする人はいつも後知恵で不当に判断されることになる。批判に対して傷つきやすいということがむしろ仕事を果たしている証拠である。
なので成果を出し、傷ついている状況を早く変えていくしかないというのがやはり答えかも。
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投稿日: 2010/01/04 | 投稿者: Eietsu
2010年がスタートしましたが、アメリカのHPCは元気そうだが日本はどうなのとか、HPCが元気になって欲しいとかの賀状を元の職場仲間から受け取ったのはおそらく今年が初めて。そのためというわけではないですが、今年もせいぜいHPCの応援を続けたいと思います。
さっそく今朝の7時のNHKニュースが次世代スーパーコンピューターを取り上げていましたが、(2002年6月に)世界一になった地球シミュレーターがまだ使われ続けているという舌足らずのコメントつきで、去年リニューアルしたES2を紹介しているくらいですから新年早々一般マスコミの理解度にはいろいろな意味で危うさを感じます(余談)。
さて、日本のHPC分野の強みは、何といっても過去からの広い経験の蓄積を持ちかつ新分野に挑戦し続けている人材が相対的に見て豊かなことで、例えばSC09での受賞を見ても三浦教授のCray Award, 長崎大等のGordon Bell Award (Price/Performance分野)、JAMSTECのHPC Challenge Award (二分野で三位)、東大平木研のBandwidth Challenge Impact Awardと米国に接近する受賞の質・量となっています。そしてヨーロッパ、中国はここまでの高い評価は得られていない状況にあります。
しかし、採用されたTechnical paperは日本は二編のみ(東工大と東北大)で、これは中国(精華大と中国科学院)と同じ論文数ですから、将来に向け大変物足りない感じを受けるのも事実です。夢の持てる斬新な中核センターができれば有能活発な若い人材がHPC分野に集まり、もっと勢いが出てくるというのは確かでしょうし、期待したい点です。
周りを見れば、どんどんTOP500リストのランクが下がる日本を尻目に、中国は曙光が今年PetaFLOPSを超える性能になる予定ですし、去年は天河1号がTOP5に入りました。いまやTOP10クラスの常連になった感の中国のHPCです。しかし劇場型国家と言われるゆえんか、曙光も銀河もシステム開発はびっくりするほど大胆なものの、国内でアプリケーション側との連携を強めているようにはあまり見えません。
そうなると日本がES2ですでに行っているような、先進的であることを前提にした産官学連携プログラムといった企画が、日本ならではの極めて高付加価値な活動に見えますし、成果も日本らしい大変興味深い内容になっています。
もちろん、この連携という類の言葉だけが一人歩きし、対象アプリケーションや対象ユーザーが総花的になってしまっては、いかに10PFLOPS性能と言え次世代スーパーコンピューターの価値がそれこそ元も子もなくなってしまいます。
対象をどのように峻別しどのような成果をいつごろ出していくのかという現実的な観点によるステークホルダー同士の価値観の共有と、それを実行できるリーダーシップの確立がこれからの課題のように見えます。
相反するようですが、海外との連携も今後は不可欠です。
ともあれ海外からは日本が米国とともにHPC分野の最強の競争相手と見られ、常に挑戦されているわけですから、そうした期待に応えられ日本のHPCという高いブランド力をキープできる2010年であってほしいものです。
(企業では競合企業に左手でパンチを出す一方、右手で握手するというやや抵抗のあったビジネス・スタイルもかなり公認(?)されてきていると思いますから、国家プロジェクト的な研究では排他的にならずに、こうしたスタイルを取り入れて成果を最大にすることも必要になるでしょうね。ドライ過ぎる?)
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投稿日: 2010/01/01 | 投稿者: Eietsu
あけましておめでとうございます。
富士山がすばらしく良く見える元旦の朝になりました。
今年が今日の朝のように、すっきりした見通しのよい一年になることを。
本年もよろしくお願いします。

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投稿日: 2009/11/22 | 投稿者: Eietsu
SC09の最終日になると、展示会がなくなることもあって参加者がめっきり少なくなります。しかし逆に主催者の知恵を働かせたユニークなミーティングがある可能性もあります。
そこで、日本にいてはわからないインドのHPC事情に興味をいだいて米国NSF、IBM, Cray, DellなどがスポンサーのインドHPCワークショップに終日参加しました。
インドの大学、国立研究所、企業の研究がいろいろ紹介されたわけですが、まず最初に感じたことは、やはりインドは頭脳流出国なのだということです。
IBM Researchを例にとるまでもなく、インド出身の研究者はアメリカで高い研究評価を得ていますが、それにくらべると地元の研究レベル、研究資金には大きな差があります。
もっともTata Groupの研究所であるCRLのように例外もあるので今後経済発展が続けば急速に発展しないとも限りません。
競争相手としては中国を意識しているようで、これはHPC分野に限られないのかもしれません。コーヒーブレークで一緒になったインド人研究者からは中国人として話しかけられました。
このワークショップではインドから将来を担う世代として学生を6人招待していましたが、NSF以外にも国防省(DOD)の研究機関がインドのように研究費が少ない大学、研究所に少額研究費を補助する制度があるそうです。どんな戦略なのでしょうか。

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投稿日: 2009/11/20 | 投稿者: Eietsu
今日のアル ゴア前副大統領の講演は圧倒的な人気で、一時間半たっぷりの講演が終わるとほとんどが立ち上がって拍手をしてました。
彼のスピーチでは、このスーパーコンピュータ コミュニティが温暖化など世界が直面している課題に対し、最先端のスーパーコンピュータ技術による情報基盤への革命的な変革をおこなう責任があると話すなど、地球シミュレータでうけた日本の技術力への危機感から過去HPCCを推進した本人なだけに、スーパーコンピュータの貢献に大きく期待したものでした。
スピーチの中に1/4は海外からの参加者だという話がでましたが、今年は常連の日本だけでなく、ヨーロッパもFZJが大きなブースを出していました。
また、最近急速にTop500スーパーコンピュータリストのTOP10の常連をしめ、日本と置き換わった感のある中国は、中国科学アカデミーのICTがとても小さいブースを出しているだけでしたが、来年には曙光がPetaFLOPS性能になると話してました。早晩大きなブースを構えることになることでしょう。

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投稿日: 2009/11/19 | 投稿者: Eietsu
水曜日は8:30からSC09の受賞式と講演が続きました。
Cray AwardはNIIの三浦先生が受賞、後藤英一先生の話から説き起こし富士通時代、そして次世代スバコンでの経験をわかりやすく展開しました。

その後、アプリケーションの受賞者のカーとパリネロがab initio MDのチャレンジと題した講演をしました。

ことしの講演会場の入りは例年の半分くらいで、やや盛り上がりが欠けた印象でした。
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投稿日: 2009/11/18 | 投稿者: Eietsu
こちらは、IBMのブースに展示のBLUE WATERSに使用されるPOWER7搭載サーバー。
水冷で、ぎっちりつまっていてかなり大きい。現行p575とは違うくらい改良が見られる。

ブロセッサーあたり8コア持ち、これがモジュールに4個(1TFLOPSモジュール)、このサーバー全体で256コアとなる。
写真に仕様が貼られてあるので興味のあるかたは、どうぞ。
(追加: 水曜のBlue Waters のBOFミーティングでは、ユーザー選抜は50k-200kコアを使って成果が出せるケースを優先すると言っていた。これからBlue Watersは200kコアの可能性が高い。そうするとピーク性能は、6.25PetaFLOPSになる勘定。2010末にシステムの主要部分が搬入され、本格的にユーザーが使えるのが、2011年後半とのこと。ソフトウェア開発についても後しばらく時間がかることが察しられるBOFでした。)


こちらはインターコネクト。ひかりを使う(1024コアでスーパーノードを構成し、スーパーノード同士を光接続、スーパーノード内は銅線接続)。富士通は、低電力可能な銅線。

スーパーコンピュータのトップレベルでは、こんな激しい技術競争をしているわけですから、これがわかっていれば、2位でもいいなどという甘い発想はとても出てきません。
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投稿日: 2009/11/18 | 投稿者: Eietsu
昨日までがTutrialで、今日からSC09本番が始まりました。オープニングの基調講演は、インテルのCTOがしましたが、宣伝色も目だたず良い講演だったと思います。

こちらは、富士通ブースの次世代スバコンと同一システムのラックの展示。
上が計算サーバー、その下が3Dトーラスinterconnectネットワークやローカルディスク(boot用)。このラックに低温水配管が組み込まれている。
たまたま一緒に見学した米国の技術者が、よくできた設計だと感心していました。

今日は何人かのアメリカ人からも次世代スバコンの状況を聞かれ、弱りました。文科省から意見募集がなされたのはSC09会場にも伝わっていますが、あらゆる方策を打つべきだと思います。
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投稿日: 2009/11/17 | 投稿者: Eietsu
11/16のSC09オープニングガラが終わって帰ってきたところですが、富士通のブースでは次世代スバコンの水冷ボードと中身が入ったラックが展示されていました (写真)。

またIBMではBlue Watersの水冷ノードが展示され、かなりの人だかりがしていました。
詳細についてはあとで。
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投稿日: 2009/11/17 | 投稿者: Eietsu
朝の7時にオレゴン州Portlandに到着。路面電車が走っていて、並木も紅葉しすっかり秋です。風が強い。
オレゴンコンベンションセンターに歩いてレジストレーションをしてきましたが、小柳先生達の面々に道でばったり。
いまJSTでは早朝のせいか、体が慣れていないので、ひとまずこの辺で。


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